どーも!
「ヒザに爆弾を抱えている」って言ってみたいバーチャルブロガー、キサカ・ヒメノです。
さて、今回は恩田陸の小説『夜のピクニック』のレビューでございます。
タイトルに「夜の~」という言葉が入っていると、不純なワタクシは少しオ・ト・ナな内容を期待してしまいますが、実際には高校生たちが主役の甘酸っぱい青春小説です。
甘酸っぱいといっても、酸味と苦味成分が多めですかね。
主役は高校生ですが、大人であればあるほど深いところまで読み込める小説だと思います。
青春気分に浸れる本をお探しの方におすすめです。
読み終わってから知りましたが、第二回本屋大賞に選ばれている名作です。
実写映画化もされているみたいですね。
恩田陸の小説『夜のピクニック』のザックリした紹介
朝の8時から翌朝8時まで、休憩や仮眠を挟みつつ、80kmの行程をひたすら歩く…
ある高校で行われる「歩行祭」という行事である。
行事の概要だけ聞くと「なんてブラックな高校行事なんだ!」と思う人もいるかもしれない。
しかし、高校生活最後となるこのイベントに臨む高校3年生達の想いは違う。
様々な感情を抱きつつも、皆が強い意志を持ってゴールを目指して歩くのだ。
そのなかでも、この物語の主人公である貴子は、ほかの生徒に知られてはいけない秘密を持ちながら、ある賭けをして歩行祭の日を迎える。
歩行祭 > 修学旅行 !?
(自分語りなので興味ない人は次の項目まで読み飛ばしてください。)
陰キャだった私は高校時代に友達は多くありませんでした。
もちろん、少ないながらも友達と呼べる存在はいましたし、高校時代にできた親友もいます。
でも、同じクラスには友達と呼べるような友達はいませんでした。
そんなクラスでの修学旅行が楽しかったのか苦痛だったのかも、はっきり覚えていません。
それなりに楽しかったような気もするし、班行動がキツかったような気もします。
さて、
「でも、修学旅行よりこっちのほうがいいな。卒業生がそう言うの、分かる」
というのは、小説の中の人物が終盤で呟く言葉です。
もし、私の高校にも「歩行祭」という行事があったなら、同じように思ったかもしれません。
マラソン大会 >>> 文化祭 > 歩行祭 > 修学旅行 >>> 体育祭
わたしの場合は、このような不等式になったことでしょう。
マラソン大会は自分のペースで走るものだし、長距離走は得意でした。
文化祭は準備期間のクラス一丸となる雰囲気が苦手でしたが、当日は別クラスや他校の仲が良い子と過ごせるので気が楽でした。
長距離走は得意でしたが、それ以外のスポーツは苦手だったので体育祭は苦痛でした。
どの世代にも刺さる何気ないセリフ
- 「―もっと、ちゃんと高校生やっとくんだったな」
- 「損した。青春しとけばよかった」
- 「ちゃんと青春してた高校生なんて、どのくらいいるのかなあ」
- 「そうかなあ。他人は青春してるようにみえるんだよな」
物語の終盤、ある一組の特殊な関係性を持つ男女のセリフです。
同世代の高校生であれば、このセリフを聞いて安心するという人も少なくないはず。
また、すでに高校生活は過去の話だという世代なら、おそらくそれが遠い昔であるほど納得できる言葉なのではないかと思います。
自分の青春は惨めだと思っている高校生の君へ
小説の中の彼らと同世代の高校生が読めば、登場人物に感情移入しやすいだろうし、小説の世界に没入できるでしょう。
「自分ももっとキラキラした青春がしたい!」
と思う人も多いだろうし、その一方で
「自分には青春らしい青春はないかもしれないな…」
とガックリする人もいるでしょう。
でも、
ということにも気付けるはずです。
それに気付くことができるだけでも、この小説を読む価値はあります。
もしも今、君が
「自分の青春は惨めだ…」
とか
「このまま青春時代を無駄に過ごしたくない!」
と考えているなら、ぜひこの小説を読んでほしいと願うばかりです。
自分の青春時代を思い出すと後悔ばかりだという大人のアナタへ
『夜のピクニック』を読むことで、自分自身の青春時代を思い出し、懐かしく思い、小説の中の彼らを羨ましく思い、もう1度自身の人生を見つめ直すきっかけになるのではないでしょうか。

あのとき、こうすれば良かった…

あのとき、こう言えば良かった…
と、誰もが青春時代を思い出しては、後悔することのひとつやふたつはあるかと思います。
若輩者のわたしがこんなことを言うのは生意気かもしれませんが、人生は長いです。
御自身の青春時代を回顧しながらも、これから先の未来について想いを馳せてみるのもいいかもしれませんよ。
もしかしたら、10代の頃には味わえなかったキラキラした青春を取り戻すチャンスが、これから先の未来で訪れるかもしれませんね。
あの頃の記憶を甦らせて、きたるべき二度目の青春に備えましょう。
時代は変わっても、青春時代に味わったあの気持ちは変わらないはずです。
人生の節目が来たら、もう1度読んでみようと思う
- 30歳になったとき、もう1度この本を読んだらどんな感想を抱くだろう…
- 将来、自分の子供が高校生になったとき、もう1度この本を読んだら何を思うだろう…
- 60歳になったら、もう1度この本を読んで若かりし日の気持ちを取り戻したい!
自分の過去を顧みながらも、自分の長い人生の将来について考えさせられてしまう青春小説でした。
『夜のピクニック』のおすすめの読み方
本の中で描かれているのは、歩行祭スタート当日の朝からその翌朝、歩行祭が終わるまでの約24時間です。
時間の都合がつくようでしたら、物語の中の時間進行に合わせてリアルタイムのような感覚で読み進めてみるのもいいかと思います。
もちろん、一気に読んでしまえば24時間も掛かることはありません。
ですが、物語の中の登場人物たちも、休憩を取ったり、仮眠を取ったりしています。
読者となるアナタも、家事や食事、その他諸々の用事をこなしつつ、夜には睡眠をしっかり取って、その翌朝に物語のエンディングを迎えるようなペース配分で読み進めてください。
きっと、物語の登場人物たちと一緒に歩いてきたような心地の良い疲労感と高揚感を味わえるでしょう。


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