どーも!
心に闇を抱えていそうで、実際は能天気なバーチャルブロガー、キサカ・ヒメノです。
今回は桐野夏生 著作の小説『グロテスク』のレビューでございます。
何年か前のアメトークで読書好き芸人として出演されていた光浦靖子さんがオススメの一冊として挙げていたのを見て、いつか読もうと思っていました。
知的で読書家の光浦さんが薦めるだけあって読み応えのある本でした。
桐野夏生の小説『グロテスク』の概要と注目ポイント
モチーフは「東電OL殺人事件」
1997年に実際に起こった「東電OL殺人事件」をもとにして書かれた小説ということらしいです。
私はその事件のことをまったく知らないし、著者ご本人の言葉を見聞きしたわけではないので、あくまで「そうらしい」としか言えません。
ただ、巻末に引用として「東電OL殺人事件」が載っているので、そうなのでしょう。
ほかにも、オウム真理教を連想させる教団も出てきたりします。
悪意に満ちた登場人物と淫らな欲望が満載
特に高校時代を描いた章で「悪意」という言葉が頻出し、まさにこの「悪意」という言葉が物語の鍵になっていると思います。
それぞれの「悪意」がどのように生まれ、形作られ、研ぎ澄まされ、どう具現化されるのか、または鈍化していくのか…?という点は、この物語を読み進めていくうえで興味深かったです。
名門女子高出身の女性が娼婦となり、男女の愛憎劇を繰り広げていくさまには、オンナの怖さを感じると同時に儚さのようなものも覚えました。
近親相姦の要素もあります。
飽きさせない構成で、読み応えも充分
「グロテスク」というタイトルから、視覚的(といっても小説なので文字での表現的)なグロさを連想する人もいるかもしれませんが、映像的なグロさよりも人間の内面に潜んでいるグロテスクな部分をさらけ出させた物語です。
1ページにビッシリと文字が並んでいるし、内容も暗く陰鬱で重苦しいお話なので、物理的な意味でも精神的な意味でも体力と気力を消耗する本だと思います。
ただ、それぞれの出来事や回想が、章ごとに各人物の視点から分けて書かれているので、最後まで完読しやすい構成になっています。
文章のスタイルも、章によって(章ごとに主人公となる人物によって)書き分けられているので、長いからといって読み飽きるということもなかったです。
こういった工夫で読者を最後まで惹きつけ続けるアイデアは「さすがだな」と思いました。
もちろん、内容が面白かったからこそ、最後まで読み進めてしまったのは言うまでもありません。
一冊読んだだけで何冊かの本を読み終えたような気分になる読み応えのある小説でした。
桐野夏生の小説『グロテスク』の主な登場人物とその印象
(物語の核心部分には触れませんが、先入観なしで読みたい人は飛ばしてください。)
ユリコの姉
物語は、この人物の現在の様子と過去の回想から始まっていきます。
男には縁がなく、男をどちらかといえば嫌っているようなフリをしつつ、実はオトコに対して興味深々なのではないかと思われます。
特に美少年には目が無い?
容姿は中の下、小太り、どこにでもいるような普通のおばさん…ではないかと私は勝手に想像しました。

20年後の私はこうなっているかもしれない…
最初は、もっとも親しみやすくて感情移入しやすい人だと思っていたけど、だんだん嫌いになっていきました。
圧倒的な美貌を持った妹のユリコに嫉妬と劣等感を抱きつづけています。
ユリコ
生まれついての美人で、根っからのオトコ好きに見えつつも、内心では男を見下し、嫌ってさえいるように思えました。
子供のころから、悪魔的美貌と色香で、大人のオトコたちを手玉に取っていきます。
中学以降、ユリコの魔性性は加速していき、ユリコに欲情したオトコたちは狂っていきます。

けしからんな…
といっても、それはユリコが若かったころだけのお話…
年齢を重ねていくごとに若かりし日の影は消えていき、堕ちるところまで堕ちていきます。
いわゆるニンフォマニアではないかと思います。
和恵
ユリコの姉の高校時代の同級生。
エリート意識が高く、客観的に自分を見る能力に欠けるブスです。
父親はさらに性格が悪いが、そんな父親を尊敬しています。
必死の思いで勉強し、必死の思いで一流企業に就職したにも関わらず、堕ちるところまで堕ちていきます。
やはり、ニンフォマニアではないかと思えてなりません。
ミツル
ユリコの姉と和恵の高校時代の同級生。
中学時代にイジメられていたらしく、高校では学年トップの成績を取って、同級生から頼りにされる(利用される)ことでイジメられることがなくなった。
選民意識の高い名門女子高で、高校編入組であるユリコの姉と和恵に対しても好意的に接する。
おそらくショートヘアが似合うアイドル系美少女。(私の想像。)
が、大人になってから堕ちます。
チャン
密入国者にして、殺人事件の容疑者。
変態的なシスコンです。
「裁判官への陳述書」というかたちで、物語の中盤から後半に差し掛かる一章が割かれています。
「陳述書」というかたちで書かれていますが、まるまる一章分の小説として読み応え抜群です。
当時の中国について書かれている点は非常に興味深いし、勉強になりました。
美人の妹は都会に出て、高級娼婦になったらしいです。
自称イケメンらしいが、裁判でチャンを目にしたユリコの姉はどう思ったのか…をお楽しみに。
桐野夏生の小説『グロテスク』の感想まとめ
縦軸と横軸が綿密に作り込まれていて、とても読みごたえのある本でした。
「一方的な意見を聞くだけでなく、別の立場の人の話を聞くことも大事」ということもあらためて勉強できました。
と同時に自分自身のことも省みて、自分の主張がひとりよがりでないかも見直さなければなりませんね。
内容は暗く重く、気分の沈む作品ではあります。
でも、人間の内に秘めた負の部分を読み解きながら、「じゃあ自分だったら…」と置き換えてみると、「自分はわりと正常な人間だな。」と前向きになれたりもしました。
あと「読み終えてから3日くらい気分が沈む」という感想を言っていた人もいましたが、よほど精神的に病んでいる人でなければ、さすがにそこまで実生活に影響を及ぼすことはないと思います。
むしろ、私の場合は反動でテンションが上がって、いつもよりも感情豊かになっていたような気がします。

読み終わるまで時間が掛かると思うので、夜更かしだけはしないように注意したほうがいいかも


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