どーも!
「世にも奇妙な物語」を見るとトイレに行けなくなってしまうバーチャルブロガー、キサカ・ヒメノです。
さて、今回は綿矢りさ著作の短編小説集『憤死』のレビューでございます。
『おとな』『トイレの懺悔室』『憤死』『人生ゲーム』というタイトルの4つの短編小説が収録されています。
「世にも奇妙な物語」が好きな人には特にオススメしたい本です。
本の表紙は可愛い色づかいですが、白地のカバーに可愛いイラストと『憤死』というピンクの文字が表記されているのが何やら意味深で、装丁からして少し不気味な印象も受ける本です。
ちなみに私は本を読む速度が遅いほうですが、それでも3時間くらいでスラスラと読めてしまったので、あまり小説を読まない人や活字が苦手な人でも読みやすいと思います。
読み終わった後の満足感も高い短編小説集でした。
『おとな』は、綿矢りさからのメッセージ?
最初に収録されている、わずか4ページだけの超短編です。
「りさちゃん」という女の子が子供の頃に見たという夢について書かれています。
この「りさちゃん」は大人になって小説家になったそうで…
ということは、もしかして「りさちゃん」というのは作者自身…?
そして、ここに書かれている出来事は、綿矢りさ本人が体験した記憶…?
だとしたら、こんなこと書いて大丈夫…?
それとも、あくまでも創作…?
はじめのうちは、ほんわかした幼少期の曖昧な夢の中の出来事かと思いきや、ドキッとしてしまう展開が待っていて、「どういうことなのだろう?」と想像力を刺激される語り口で締めくくられます。
わずか4ページの中の起承転結で読者を引き込んでしまうテクニックは、さすがですな。
『トイレの懺悔室』は、マインドコントロールの恐怖を書いている?
ざっくりとあらすじを書きます。
「たまたま家が近いから」という理由でいつも一緒に遊んでいた少年たちが、お祭りの日に近所のオヤジの家に招かれます。
オヤジ曰く「大人になるための儀式をしてやる」ということらしい。

ゴクリ…
と、まあ、登場人物のの男の子たちと同様、読者の私もオトナな展開を期待してしまうわけですが、オヤジの家ではナニが行われるのか…
さて、小学校卒業後、少年たちはそれぞれ別の新しい友人を作って、一緒に遊ぶ機会もなくなっていきます。
そして、大人になるにつれて、オヤジのことも、お祭りの日のことも、「そんなコトもあったかなぁ…」と記憶の隅に追いやられていきます。
が、少年たちのうちのひとりは子供のころから大人になってからも、ずっとオヤジの家に出入りしていたらしく…
決して霊的な存在が登場するお話ではありませんが、収録されている4つの短編の中で、私はこのお話が1番怖かったです。
ストーリーだけでなく、文章中の表現からイメージされる情景からも恐怖を感じました。
『憤死』って、そういうことなのね。
本のタイトルにもなっている短編です。
一番、壮絶な展開を想像させるタイトルではありますね。
私も「どんな結末が待っているお話なのか?」と恐る恐るページをめくりながら読みました。
が、この短編に関しては、先入観を持たずに読んだほうがいいと思うので、あまり詳しく書くことは避けようかと思います。
作者の意地悪な面が出ているというか、皮肉と嫌味がたっぷり込められていたように感じました。
といっても、決して作者のことを嫌いになるような内容ではなく、むしろ共感せずにはいられない内容です。
よく考えてみたら、「私はこの手のタイプの人には出会ったことないなぁ」と思いつつも、

あ~、こういう人いるわ~
と妙に納得できてしまう人物が登場してきます。
綿矢りさの人間観察能力やキャラクター創造力の光る短編です。
『人生ゲーム』は、恐怖と感動に包まれる不思議なお話
このお話も怖いです。
怖いけど、ラストに近づいていくにしたがって、少しずつ恐怖心が感動に変わっていきます。
そして、

人生っていうのは山あり谷ありなんだなぁ…
と思うと同時に

平穏に長生きできる人生が、やっぱり1番幸せなんだな~
と思いました。
本を読む意味について、「他人の経験を追体験して、自分の経験値や想像力を向上させることができる。」といったことをたまに見聞きしますが、まさにそれを実感させてくれるお話でした。
友人の人生に対して、どこまで深くかかわっていくことができるのかということと、

人生の最期をどう迎えるのが幸せなのかな…?
といったことを考えたくなります。
誰でも自分や大切な人の死を考えるのは怖いと思いますが、その恐怖心を少しだけ和らげることができるお話でした。


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