今回ご紹介するのは、三浦しをんの短編小説集『木暮荘物語』です。
官能小説を読みたいわけじゃない…けど、他人の、男女の性を覗き見てみたい。
なんて考えている方にピッタリの1冊です。
オンボロの木造アパート。
それが、木暮荘。
そして、木暮荘の住人と、周辺の街に住む人が体験するほんの少しの非日常を描いた短編小説集が『木暮荘物語』。
「非日常」と書きましたが、ストレートに言うと「エロいお話」です。
ただ、ストレートな言い方は作品の雰囲気に合わないので、「性にまつわるストーリー」くらいがちょうどいいかな。
また「性」の濃淡も各話ごとに異なっており、サラッと流せるもの、変態的なシチュエーション、感動的なもの、結局そんなものだよね…なんてエピソードまで、バラエティに富んでいます。
そして、どのエピソードも、ありそうでありえないギリギリの境界線を攻めているのが、この短編集の目を見張るところです。
例えば、3人の男を日替わりで部屋に招き入れる女子大生。
そんな女子大生の部屋につながる覗き穴を見つけてしまった男性会社員。
70歳を過ぎてから、急に情欲を搔き立てられたおじいさん。
- いや、実際にはありえるのかもしれない。
- 同じような経験をしている人はいるかもしれない。
- ひょっとしたら、私もこんな人生を歩んでいたかも…
- もしかしたら、今後の人生で起こりえるんじゃないか…?
そんな風に思えてしまうから、面白いです。
さらに秀逸なのが、各エピソードとその登場人物が、また別のエピソードで関わりあう点です。
- あれ、この男はあのエピソードに出てきたアイツか!
- あの女性、実はこんな生活をしていたのか…
と、繋がり合うから、続きが気になって仕方がない。
「壮大なスケールを描いた小説は疲れる」なんて思ったとき、全六室の木造アパートを中心とした物語で、ほっと一息ついてみてはいかがでしょう?
短編集なので、ふだんは本を読まないという人でも読みやすいと思いますよ。
コミック版もあるみたいですな。


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